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あと十年なら

昨日、五十歳になりました。以前、小学校で狂言の授業をしたあとの質疑に「老後はなにをするのですか」と尋ねられたことがあります。定年などない世界、自分にいわゆる老後があるなんて考えたこともなく、またそういう考えにおいての返答をしたように思います。

ですが、定年退職後という意味の老後はなくても、老もあれば老後もないわけではない。ただこれまでの延長として何年も過ぎていくのは無策であるようにも思います。例えば仮に、六十で狂言をやめる計画だったとしたら、これからの十年はどうするんだろうか。自分は最後にどんな狂言師として終わるのだろうか。五十になるにあたって、そんなことを考えてしまいました。

例えば、営業に勤めて少しでも名を知られようとするのか。自分と向き合って、納得に近づく芸を目指していくのか。やってみたかった新しいことをやってみるのか。あと十年、というわけではなくても、方向ぐらいは。