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好きな狂言は

「好きな狂言は何ですか」


これ、とてもよく聞かれますが、難しいですね。特に「一番好きなのは」と聞かれると、答えようがありません。

これから書くことも、多分何度も手をいれることになるのではないかと。


まえは、「末広がり」「靱猿」のような、楽しくて見ごたえがあってハッピーエンドで、洗練された話が好きでした。いまでも「おすすめの狂言は」と聞かれたらこの辺りですかね。


でもいろいろな話と付き合ってみると、混沌として未整理な話のなかに、人間くさい、活力のようなものを感じられて、そんなのもなかなかいい。美術などにもそんなのはありますね。


そういう話は、一曲でこれが名作といえるようなものではなくて、いろいろな話がシリーズとしてつながって、世界を作っていきます。その主役はやっぱり民衆、でしょう。


だから民衆の代表であるところの、太郎冠者ものの話や、夫婦の話などは、好きなほうといえますね。そこに中世の生活風俗や季節感が合わさっていればさらにいい。