この正月の活動は、二日の「名古屋能楽堂新春謡初め」、三日の「名古屋能楽堂正月特別公演」で始まりましたが、晴れやかな正月という気分ではありませんでした。皆様も同じ心だと思います。
一日夕方には能登半島地震が起こり、いまも救出活動や避難生活が続いています。一人でも多くの救出を、亡くなられたかたのご冥福をお祈りし、また被災者の皆様が平穏な日々に戻られるよう、私も微力ながら寄付などをして参ります。
二日は羽田での航空機事故もありました。旅客機の乗客は全員無事で、絶望的大惨事は免れましたが、海上保安庁のかたが亡くなられました。こちらは天災ではなく、なにかしらの対策で避けられたのではと思うと残念な事です。
能楽は祈りの芸能という自覚があるので、コロナ禍においても、疫病退散祈念などと銘打った公演を致しました。効果はともかくとして、心を強く持って前向きに生きるという意志があったようですが、私はそれほど乗り気ではありませんでした。既に「コロナ脳」などという言葉もあり、心はまとまっていませんでした。この正月の方が遥かに強く、祈りをもって勤めましたし、また無事に催会できたことを「有難く」感じました。
これまで、能楽は祈りの芸能といわれ、能は鎮魂の芸能というのを聞きながら、では狂言とはどんな芸能かとさまざまに語られ、私も考えてきましたが、あまりスッキリ納得できるものはありませんでした。今回私がようやくたどり着いた答えは、狂言は生命力の芸能というものです。言ってしまえば、読んでしまえば簡単な言葉ですが、この簡単な言葉が出なかったのです。正月の出来事の上に、実感をもって言える答えです。